ヘッドホン

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古い人である私はヘッドホンというと、頭の上からヘッドバンドを回してデカいイヤーパッドを耳にがばっとかける大きなヤツを想像するのだが、今はイヤホンタイプのものもヘッドホンという名称で呼ぶらしい。
確か、ウォークマンが流行り始めた頃は、ステレオイヤーホンと呼んだような気がする。

私は通勤で音楽を聴いている。
もちろん音楽が好きだからだが、もうひとつ、耳栓、という理由もある。
オヤジ連中、おばさん達、大学生共のがあがあうるせえ話し声が大嫌いだからだ。
だから、私のマイベスト集である音楽のプレイリストには「耳栓」と「超耳栓」という曲集がある。

使っているのはイヤホンタイプのヘッドホン。
いわゆるカナル型という耳の穴に突っ込んで栓をするタイプは、かつて一度使ってみて、やめていた。
なんとなく、密閉した状態で鼓膜にダイレクトにがんがん音圧をかけるのが、難聴一直線な気がしてやめたのだ。
確か、Sonyのおまけのヘッドホンだったと思う。
更にまた間が悪いことに、それをちょっと使い出したそのタイミングで、聴力に異常を感じて耳鼻科にかかった、ということがあった。
結局は精密検査をしたわけでもなく町医者の耳鼻科では「問題無し」ですごすごと帰ってきたわけだが、はっきりと高域に対する感覚が減退しているのを感じた。

しかし、これはもしかしたら加齢のせいだったのかもしれない。
ただ、それ以降は普通のインナーイヤータイプ(耳の穴に栓をしないタイプ)を使っていた。

私は15年間ほど楽器関連の仕事をしていて、そのうちの半分以上は音響に係る仕事をしていた。
いわゆる、レコーディングやライブに関する仕事だ。
特にレコーディングの現場では、『録る』ほうに重点を置いた機器のクォリティが求められた。当然、『録ったものを再生する』出力装置も、である。
これは、たとえばスピーカーであれば「いかに素に近い音で再生されるか」が重要となる。
再生される環境は色々とある。ホールなどの大音響、家庭でのステレオやコンポ、テレビやラジオなどの放送。
レコーディングとはそれぞれの環境において素材となるCDを作成する現場だが、出来上がったCDは素材そのものでなくてはならず、再生される素材(音楽)に色が着いていてはならない。

だから、私は、いわゆる高級オーディオであるタンノイやリンといったン百万円もするスピーカーは好きになれなかった。
それらは、いわゆる「良くした音」に聞こえてしまうからだった。

レコーディング等に使用されるスピーカーといえば、大型ではJBLの4344であり、家庭用ではYAMAHAのNS-10Mであり、放送用ではオーラトーンのキューブだった。
(古いなあ)

ただ、それらを家庭で「良い音」にしようと思えば、アンプやイコライザを駆使して、結局のところタンノイやリンの音に仕上げようとすることになるだろうか。
オーディオマニアはプロからは「再生屋」などと揶揄されるわけだが、再生したい極限の良い音は、結局のところ、彼らが一番良く知っているのだろう。

さて、私の耳は、そんな私の経験から、やはり極力「色の無い」音質を求めてしまうようにできている。
いわゆるドンシャリもダメだし、POPやROCKといった味付けされた音もダメ。iPODや携帯の音質も全くいじらない。ノーマルのまま。
その状態で「良い音」を求めてしまう。

市販のヘッドホン(イヤホンタイプね)も、ほとんどは不合格であった。
ただ、まれにオマケのヘッドホンの中にも、なかなかいい音がするものもあった。
が、大抵は聞くに耐えない音質だった。
市販品であれば、5千円以上のものには、かなり「耐えられる」音質のものが多いように思った。
・・・ずいぶんと買ってはガッカリを繰り返したように思う。

そんな中、このところ使っていた、苦労して発掘したヘッドホン(なにかのオマケのなかから見つけ出した、それなりにフラットな音質のもの)が壊れてしまった。片側が出なくなった。
しかたなく予備で持ち歩いていたもので代用したが、これがまた「うわ、なにこれ!」というシロモノだった。
あまりにジャキジャキな音(・・・なんと表現していいかわからない)に堪えられず、携帯のサウンド設定をPOPにして凌いだ。が、いくぶん音質は和らいだものの、ヘンなディレイ効果(エコーね)がかかっていて気持ち悪い。
わざわざエコーを付け加えて味付けしているわけだ。私にとっては最悪の設定だ。

ついに耐えられなくなって「もう!こうなったらちょっといいのを買う!」とヨドバシカメラに飛び込んだ。

1Fの売り場にはロクなものが無い。これしかないのかなあ、と思っていたら、上階にたくさん置いてあるようだった。

あまり期待せずに行ってみて・・・・・驚いた!!
何に驚いたかといえば、そのヘッドホン売り場で私が目にしたのは、かつて私が仕事で係っていた頃の業務用音響機器のメーカーが、ずらりと並んでいたからだった!

曰く、SHURE、
662.jpg

曰く、beyerdynamic、
logo.jpg

曰く、AKG、
akg_sounds_better.gif

曰く、Sennheiser。
sennheiser_logo.gif

レコーディングやステージの現場ではおなじみの名前がすらりと並んでいた。
これは・・・
仕事で携わってきた私には衝撃的な光景だったが、しかしそこに並んでいるのは3千円くらいから6千円くらいまでのものが主流なようだった。
いや、そのくらいの価格帯が売りやすい、というわけなのだろう。
うーむ、これは、いくらメーカーがメーカーでも、期待しすぎてはいかんのだろうなあ。
私は昔、自宅録音の趣味で5万円のbeyerdynamic製のマイクロホンを使っていたし、ヘッドホン(デカいやつ)はAKGの3万2千円のモデルを使っていた。
最低でもこれくらいじゃないと、と思って選んだモノだった。
それと同じクォリティを、これら3~6千円のヘッドホンに求めるのは、やはり無理があるだろう。
ちょっとため息が出た。

何10万円もするモニターヘッドホンはいらない。
が、「せめてこれくらいの音」というラインはある。
フェラーリやポルシェまでは望まないが、スカイラインGTRくらいは欲しい、といったところか。
(乗用車を知らないんで例えがヘタ?)

高級ヘッドホンもかなり需要があるらしく、オーディオテクニカ製で販売価格が4万円を上回るものまであるのにはたまげた。すごい値段だ・・・
・・・しかし、そこにビクターやBOSEといった名を見ると、
「これはオーディオマニア向けかもしれない」
という警戒心が私に働いた。
いじられた音なんだろうな・・・

とりあえず、後悔してもため息程度で済む価格範囲は1万円程度だろうな、と思い、前にwebのインプレッションを読んだことのあるSHUREのSE110という機種にしてみた。
IMAGE1372_o_.jpg

SHUREといえば、ステージでもレコーディングでも、SM58という超々定番のマイクロフォンがある。
よし、SHUREに免じて使ってみよう。
01_o_.jpg

使用してみた感想は・・・
うーん、こんなもんだろうな、と。
なんというか、カタイ。
音を表現するのにカタイとかヤワラカイとかアカルイとかクライとかは仕事の現場ではタブーなのだが。
さすがに1万円もする高級オーディオだけあって、そうそう悪くは無い音だが、関心するほどではなかった、というところか。
まあ、無理にいえばSHUREらしい音、かもしれない。
なんというか、アメリカっぽい音、というか。
そういえば、これで聞いた感じでは、ブリティッシュハードロックよりはアメリカンロックのほうが、それっぽい、という感じがする。

しかし、カナル型である。
まあ、これはこれで、遮音に優れていていいだろう。
が、市販の耳栓と同じく、体を通して聞こえてくる振動雑音が気になる。
歩いているときの足音、頭に触ったときの音。驚いたのは、心臓の音まで響いてきたことだ。
(電車で座っている時に聞こえてきた)

あまりにも周囲の音が聞こえないので怖いのだが、電車内での「耳栓」にはもってこいである。
以前に使用してビビった『鼓膜ダイレクトな感じ』もあまりしないので安心した。
が、いかんせんちょっと音がカタイ。

ただし、これは「ソフトフレックスパッド」というイヤーパッドを使ったせいらしかった。
このパッドはプラスチック、というか、ゴム、というか、いわゆるカナル型ではわりと一般的な素材だ。
外部の音が聞こえなくなる、という意味ではいい素材なのだろうが、次に試してみた「ソフトフォームパッド」で、このヘッドフォンは一気に実力を発揮した!
02_o_.jpg
(これらはすべて付属品。材質が2種類、大きさは3種類ある)

「ソフトフォームパッド」は、いわゆる耳栓などに使用される材質で、ゴム質のスポンジのようなもの。昔?あった「イヤーウイスパー」という耳栓の材質と同じだ。
これを使うときは、あらかじめつぶした状態で耳の穴に押し込み、しばらく手で支えていると、じわじわと形状が元に戻り、耳の穴にぴったりとはまり込む。
通常の耳栓であれば、これで完全に塞いでしまうわけだ。
それを使用したこのヘッドホンは、ソフトフレックスパッドを使用した際の音質とはまるで違っていた!
まず、カタさが無くなった。つまり硬く感じるような音質であるわけだが、ソフトフォームパッドを使用した際の音質は、私が感じる限り、かなりフラットだった。
私好みなのだ。
webなどのインプレッション記事を見ると「おとなしすぎる」などと表現されているが、素材である音質そのものにおとなしいも暴れるも無いだろうと思うのだが、確かに再生を主眼として聞く態度からすれば、そういう見方もあるのだろう。
趣味が違う、ということなのだろうか。

不思議に思ったのは、耳栓としてはソフトフレックスパッドのほうが優れている点だ。
外部の音を遮断するのはこっちのほうが性能がいいし、また、気になる振動雑音もソフトフレックスパッドのほうが大きい。
遮音性に優れているゆえんだろう。

しかし、遮音性によって得られる利点といわれている低音域についてはソフトフォームパッドのほうがいいように感じた。事実、ソフトフレックスパッドが『硬く』感じるのは、低域の再生性がいまいちでその結果中域から高域が強調されて聞こえるせい、とも思えるからだ。
不思議だ。

また、このヘッドホンはいわゆる「SHUREがけ」というコードの取り回し方が特徴的で、耳の上を回してひっかける掛け方をする。
03_o_.jpg
が、歩いていたりすると、すぐにはずれてきてしまう。
別にはずれてきても、本体は耳にしっかりはまっているので、気にしなければいいのかもしれないが、やってもやってもすぐにはずれてきてしまう。
私の耳の形状が、ひっかけ辛い形なのかもしれない。
耳の穴に突っ込む形状が逆になってしまうからダメかも、と思ったが、通常の「コードが下」の使い方でも別に平気そうなので、SHUREがけはやめて普通のかけかたにして使っている。

微妙な点は多々ありそうだが、音としてはかなり気に入った。
ひとまずは合格点だろう。
そうでないと困る。1万円もしたのだから。

次はぜひ試聴して別のヘッドホンを選んでみようか。
しかし、しばらくはアメリカンなSHUREとお付き合いである。

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