日本人は親切ではない

| コメント(1) | トラックバック(0)

カテゴリ:

先日、中国の人々が親日的に変化しつつある、という記事を紹介した。
曰く「日本人は親切」、曰く「日本人は礼儀正しい」、曰く「日本人はみな優し
い」、etc、etc。
 
記事にある日本での体験はおそらくみな事実で、たしかにそのような体験から、
日本人は親切で礼儀正しくて優しいのだろうと、日本人である私もそう思いたい。
 
しかし、そのような慢心は、ほんのささいな日常的体験から、いとも簡単に粉々
に砕け散るのであった。
 
先日、怪我をした。

どのくらいの怪我かというと、三週間強の間、ずっと松葉杖をたよりに歩いていた。
階段の昇り降りは相当な苦労を伴い、駅などではエレベーター、またはエスカ
レーター(これもかなり乗り降りに苦労した)を使った。
 
通勤の電車やバスにも苦労した。
よほどの事情が無ければ優先席を使用した。
 
優先席を使用したのには、実は『日本人的な』ヘンな気の使いようがあったから
だと自分は思っている。
 
というのは、松葉杖を突いて乗り込んで来た私を見れば、日本人ならば否応も無
く「この怪我人に席を譲らなくてはならない」という社会的な圧力が座っている
人に働くからである。
通勤電車というのは、ほとんどが会社で働く社会人が乗るもので、それらの人々
は厳しい労働環境から皆少しでもいいから座りたい、と思っているものだ。
もちろん、私自身もその一人である。
過酷な混雑状況の中でようやく座席にすわる僥倖に巡り合えたというのに、目の
前に松葉杖の怪我人に立たれたりしたら、がっかりするではないか。
無視して座り続ければ「アイツは怪我人に席を譲らない非道なヤツだ。人として
どうよ」という冷たい目、白い目の社会的圧力に全開で晒されなくてはならなく
なるのだ。
自分は何も悪いことはしていないのに・・・
 
だからこそ、松葉杖の怪我人である私は優先席に逃げ込む。
ここならば、堂々と怪我人ヅラができるからである。
 
まあ、中央線は問題無い。
私は八王子に住んでいて、東京駅まで通うわけなので、ちょうど始発駅to終点な
のである。
相当な混雑であっても2、3本見送れば確実に座っていける。
なにしろ八王子?東京間は快速電車で66分もあるので、私は座っていきたい・・・
 
しかし、残念なのは、出勤時間を短縮しようと思って新宿で乗り換える、埼京
線、湘南新宿ライン、そしてあるいは東京駅から乗る山手線だ。
 
なんと、三週間の間、優先席を目の前にして、松葉杖を突いた哀れな怪我人の私
に、一度として席を譲る人がいなかった!
見事に、タダの一度も、である。
 
さすがに、私はこれは予想していなかった。
前述の通り、やはりいやーな顔をされても、さすがに優先席であれば、私は席を
譲られるのだろうな、と思っていたのだ。
私はそれさえも申し訳なく気後れした気持ちを抱いていたのだったが・・・
しかし、私のそんな気持ちは、ものの見事に裏切られたのだった。
 
私は、普段は健常者だ。
だから、なのかもしれないが、松葉杖で危なっかしく吊革に捕まってフラつく体
を懸命に支えていたとしても、周りの乗客に対して申し訳なく思いこそすれ、
「席を譲って欲しい」とは思わなかった。
体の不自由な方の気持ちは私には到底うかがい知ることはできない。
恒常的に不便を強いられるわけではない私は、どうせこのしんどさは一時的なも
のだし、満員電車もいつものことさ、くらいに思っていたからである。
フラつく私は邪魔なのだ。
唯一気になるのは、「怪我人の私が否応無く座っている人にかけてしまう『譲
れ』圧力」なのである。
 
しかし、どうやらそれは、私の思い違いだったようだ。
 
日本人は、私が思っていたほど、優しくはないようだった。
 
私は、どちらかといえばそのような圧力に簡単に屈してしまう人間で、東京駅で
2本見送ってようやく座れた座席であっても、よぼよぼのじいちゃんが次の神田
駅で乗ってくると「どーぞどーぞ」と譲ってしまう。譲らないで「あいつひでえ
ヤツ」という目に晒されることに怯えているからだ。
 
妊婦さんにも譲ってしまう。
「どーぞ、どーぞ」
ただ、鈍感な野郎の私は、妊婦さんマークのバッヂがないと確証が持てないのが
悲しい。
もし、妊婦さんでなくて『ふくよかな女の人』だったらどうしよう・・・
「失礼ねッ!」と叫ばれたりしたら、どんな謝罪をすればいいのか。
妊婦さんらしき服装を見極めようとしたり、ヒールのない靴を履いているからや
はり妊婦さんなのではないだろうかと推測したり、それそれは涙ぐましい努力を
しているのだ。
 
ともあれ、普段の私は、簡単に席を譲ってしまう、極めて社会的圧力に弱い人間だ。
だから、普段は絶対に優先席のそばには近寄らない。
座れば「初めから負け」が確定しているわけだし、お年寄りに譲らない中年オヤ
ジや平気で携帯電話をいじくっているヤツがいてさえも、必死で非難がましい視
線を送らないように耐えなくてはならないからだ。
 
そう。今回気がついたのだが、優先席に座っている健常者達は、年寄りや妊婦や
怪我人に席を譲らない者、平気で携帯電話をいじくる者、あまつさえ大声で電話
してるヤツまでいるのである。
 
特定の路線、特定の時間、あるいは特定の種族という要素があるのかもとも思っ
たのだが、出勤も退社も不規則な、しかも乗る路線もバラけている状況で、揃い
も揃って三週間もの間、これらの状況が固定的だったとは、もう私はこれが「あ
る程度一般的な状況」であると認めざるを得ない。
 
加えて、『善』の圧力に屈して座席を譲る私は少数派なのだ、と。
 
私がイメージしていた、そこはかとなく善なる気の弱い日本人像は、単なる幻想
だったようだ。
 
ただ、こうも考えられるかもしれない。
 
それは、そもそも優先席という空間が、そのような性悪の吹き溜まる空間なの
だ、と。
年寄りや妊婦や怪我人は、総数からすればそう多くは無い。いくら老人人口が増
えてきたとはいっても、通勤電車の一角を占めるほど目立った存在ではない。
優先席を利用すべき本来のユーザーは、ごく少数のはずであるのだ。
ということは、普段、優先席は他の空席と同様に、利用者がいなければタダの空
席なのである。
 
ここで、では優先席に、という意識が働く者と働かない者の差が出るわけだ。
 
優先席は、年寄りや妊婦や怪我人が乗ってきたら、率先して譲るべき席。
そこに堂々と気後れも無く座り、あまつさえ目の前にそれらの優先されるべき人
間がいたとしても譲らない、それどころか「遠慮すべき」とされている携帯操作
や電話ですら平気でやる人間となれば、これはもう、これら優先席は、普段から
そういう性悪な人間が座席を占めているのだと考えられてもしかたあるまい。
 
事実、私が見て感じた限りでは、私が普段利用している一般?席より、優先席に
おけるマナーやモラルは、あきらかに低質である。
 
私がイメージするそこはかとなく善である気の弱い日本人であれば、とりあえず
優先席は避けておこうとする。
まあ空いてるんだから座ってもいいか、という意識が働く人もいるが、そういう
人は年寄りや妊婦や怪我人に対しては席を譲る。たとえ不承不承であっても。
 
しかし、それさえも無視してペースメーカー装着者の危険をも無視して携帯操作
を平気で行うものが多数を占めているとなれば、これはもう私の考える前提が間
違っているとしか思えないのである。
 
いや、むしろそういう性悪どもの吹き溜まる場所こそが優先席なのであろう。
 
事実、一般座席では、そこまで酷い落差は感じられない。
 
ここで挙げた通勤電車の例だけでなく、この三週間の間、私は
「私が思っていたほど日本人は親切でも優しくも無い」
という体験を色々とした。
同じ日本人の私が感じてしまったのだから、あたらずといえども遠からず、だろ
うと思う。
 
救いを見出せるだろうとすれば、少数ながら、私と同じような、気の弱い、そこ
はかとなく善なる日本人もいるのだろう、ということだ。
私だって胸を張れるほど良い人間ではない。電車内にころがる空き缶を面倒臭ぇ
と放置したりして、後から自分の至らなさにガッカリすることなど山ほどある。
その程度の人間である私にガッカリされるほど性悪なヤツが優先席の座席を占め
ているのだから、私のガッカリ度がどれほどのものか察していただきたいものだ。
 
だから、少数でもいいから、世間の白い目が怖くて社会的弱者に席を譲る人間が
いてほしいと思うのだ。
 
また、こんな話を聞いたことがある。
私はあえて優先席に座るのだ、と。
なぜならば、その席を必要とする人が乗車してきた時に、私のキープしておいた
席をその人に譲ることができるからだ、と。
こういう積極的な善を行う人には、心から拍手を送りたい。
もちろん、他にも、私の知らない方法で善を行っている人々がいるのだろう。
そう信じたい。
 
あのサーチナに掲載された、「日本人って優しいんだな」という中国人が感じた
日本を、少しでも維持していかなくては残念すぎるだろう。
 
渡る世間は鬼ばかりだが、どんなところにも小さき良き日本人があると信じたい。
自分もその一人でありたいと思う。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.ichigou.jp/mayoimtadm/mt-tb.cgi/103

コメント(1)

コメントする

ichigou.jp コンテンツ

LINKs

迷いの森 携帯サイト

twitter ichigou_0o0v

アイテム

  • k1328203210.jpg
  • T4.jpg
  • BAD.jpg
  • QRtwtr.jpg
  • Angels_and_Demons.jpg
  • 2012.jpg
  • knowing.jpg
  • DSCF7567s.JPG
  • 289b7166.jpg