島耕作に知る「いい人」をやめる男の成功哲学

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島耕作に知る「いい人」をやめる男の成功哲学
弘兼 憲史
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このタイトルの本をもう何冊読んだだろうか。

「いい人をやめる・・・・」
「馬鹿になれる男の凄さ・・・・」

私は自分のことを「いい人」だと思っている。
人間関係ではなるべく波風を立てたくないし、男にも女にも、優しく、誠実に正直に接したいと思っている。
そして、そんな自分に苛立ち、嘘つきだと思っている。

また、私は自分は利口ぶりたいのだと思っている。自分は馬鹿になれないな、と。
弱点や恥を晒したくはないし、他人には利口で利発でデキるヤツと思われたい、と。
そして、そんなええカッコしいに疲れ、これもまた自分に苛立っている。
もうやめたい、と。

中途半端に、オレは自分勝手に生きるんだ、とポーズを取り、中年男はどうせ社会にスレた悪党ばかりさ、と言い訳をしている。さらには馬鹿を装い、わかりません、知らなかった、出来ません、教えてください、と、なるべく馬鹿っぽく言って、『私は馬鹿になれるオトコなんです』というポーズを取る。

・・・・だんだん自分が情けなくなってきたな(笑)

確かに若いうちは純粋まっすぐ君だった。
学校の成績もそこそこで、運動も小器用にできた。
バンド活動に夢中で、ライブもかなりやった。
学校では適当に反抗的で、適当に優良だった。
だから自分に慢心した。それは今でも大して変わっていない。
だってお前よりオレのほうがデキルじゃん。
いや、本当に嫌な奴だな、オレって。
私はそれをつい最近まで、まるで気がつかなかったようなオトコだ。

つまり、骨の髄までええカッコしいだった。

しかし、なのか、だから、なのか、私はそんな自分に苛立っていた。
そう、若い頃から、もっと弱みをさらけ出して、そして素直にできたらどんなに気が楽か、と思い続けていた。

これは、全国のいい人でええカッコしいの人間に共通の気持ちなのだろう。

社会人になってから、何度か自己啓発研修とやらを受けさせられた。
ある時は、私の鼻はさらに高くなるだけだった。やっぱりオレはできるオトコなんだ、と。
しかしある時は、その高くなった鼻をポッキリと折られた。
自分が思っているほど、お前は大したヤツじゃないんだ、と。他人はそれほどお前を優秀だとは思ってないんだよ、ということを研修で証明されたりした。
しおしおになった。
まあ、よく考えてみれば、そういった自己啓発研修は、他者が見る自分を確認する、という意味で、いままでそんな視点で自分を見てこなかった私のような傲慢な若者には衝撃的だったが、そういう勉強になる意味合いとは別に、「お前も会社で波風を立てない『いい人』になれ」という研修でもある。
いい人製造研修なのである。

いい加減年を取った今になってみると、その意味が良く分かるようになるのだ。
・・・今になってようやく解るのは、やっぱり馬鹿だから理解するのが遅いのか(笑)

さて、島耕作である。
この本は、人気漫画「島耕作」を書いた漫画家の著書なのだ。
サラリーマン漫画である島耕作を書いた人の本だから、どうせ立派な社会人になるための自己啓発系人生ラーニング本なんだろう、と思ったが、本屋でぱらぱらとめくってみたら、なんだか目次が面白そうなので買ってみた。
この人、松下電器に勤めていた人なんですねえ。
そういう意味ではサラリーマン社会も知っているし、「いい人なんて装ってもロクなことがない」というのはわかる気がした。
私は「島耕作」は読んだことが無いが、いや、サラリーマンがテーマの漫画なんて読む気もしなかったが、この本を読んでみると、ちょっと島耕作を読んでみたくなった。
面白そうだ。

読んでみて気がついたのだが、私は自分が思っているほど、あまり「いい人」では無いらしい(笑)
第一、あまり空気に迎合しない我儘なオトコだ。空気読め、というのが比較的最近の傾向らしいが、そういう意味では私は昔から自分の都合を優先してあえて空気を無視してきたきらいがある。
ま、一応私も空気を読むのだが、あまり重視はしない。あまり、というのは、やはり私も仕方なく皆に同調することがあるということだ。
私は、その同調している部分で「自分はいい人」と勘違いし、自分で自分に苛立っていたようだ。
なんだか馬鹿馬鹿しいな。

馬鹿になるほうは私には難しいらしい。
私が持つつまらないプライドが邪魔するのだ。
こっちはそう簡単にはできやしない。
つまらないプライドは、捨てるにはなかなか勇気がいる。
これができるようになると、オレはそこそこのデキるオトコになれるのだろうか(笑)

この本のレビューを色々と読んでみると、共感できる"現在いい人"も、共感できない"現在いい人"や"いい人を脱出したい人"や"半分脱出してるっぽい人"など、色々あって面白い。
しかし、今流行の「上から目線」の物言いで申し訳ないが、この本の売り上げが気になるのか、共感者をなるべく増やしたいのか増やしたくないのか知らないが、なんで一生懸命ネットショップのレビュー欄に反論を書いたりベタ褒めしたりしているのだろうか。
私にはどうでもいいことに思える。
本を読んでこんな感想を持ちました、とか、まったく同意できませんでした、とか、そんなことを一生懸命書いている。
これからこの本を買う人の役に立ちたい、と思って書いているのならば、それは紛れも無く「いい人」の行動だし、自分の意見を表明したい、という思いであれば、ショップのレビュー欄に?(笑)、なのである。

だからこのテのネットショップレビュー欄は、実際に自分が読んで感じた事と大きく乖離するのである。
そういった人々が書くレビューが、私に取り込まれる本の内実と合致するわけがない。
異質な人々が書いているのだ。
ちなみに、映画のレビューも同様に当て嵌まらない。駄作とこき下ろされている映画が、観てみると鳥肌が立つほど面白かったりする。
たとえ有名な映画評論家が書いていても、だ。

この本は、「いい人」の本質をかなり的確に言い当てていると思う。
そして、それがいかにつまらなく苛立たしい人生を占めてしまうかを上手に表現し、そこから脱出するためのモデルを示してくれている。

正直、私はあまり自分が「いい人」に当てはまっていなかったことにホッとした(笑)

ただ、これを実践できる「いい人」はどれくらいいるのだろうか。
私は、そう多くはいないだろうと思う。
これは、自分の人生のありかたをひっくり返す衝撃的な方向転換なのだ。

まあ、そこまで本格的にひっくり返さなくても、エッセンスは役に立つだろう。
あまりいい人ではないらしい私は、確かにこれまでの人生で少なからぬ摩擦を経験してきた。
時には会社で問題を起こし、もうやってられんと退職願を上司に突きつけ会社に踵を返し、プライベートでも友人を失ったり切り捨てたりしている。
ひどい奴である。

そんな業を誰もが背負えとはさすがに言いづらい。
この生き方は素敵ですよと満面の笑みでは言い難い。

いい人でいられるか、いられないか。
私は性分で、いられないのかもしれない。
私は堪え性の無い人間だ。だから、嫌いな仕事はできない。
経理や総務、あるいは役所の仕事を自分がする姿など想像したこともなかった。
私は自分で「面白い!」と思う仕事しか選んでこなかった。

ただ、言い訳をさせてもらえば、それは私が世間知らずの狭視野な人間であるからなわけで、実際に経理や総務や役所の仕事をしてみれば、それがいかにスリリングでエキサイティングな仕事なのか、想像はできるようになってきた。

ただし、逆に「生活のため」「社会的評価のため」という理由では仕事を選ぶことができない。
私にはそんな理由で仕事を我慢して行う堪え性は無い。
そこが、私みたいなヤツと「いい人」の境目なのかもしれない。
銀行マンでも役所の戸籍係でも、「やってみれば面白そうだ」とは思えるようになってきたけど、ただただ給料をもらうために何の興味も湧かない仕事を日々続けていくことは、私にはできないだろう。
なぜならば、私はいい人ではないから、なのだと思う。

私は仕事に就いてしまえば、その仕事の中にスリリングさやエキサイティングなことを見出して、興味全開やる気満々で鼻息も荒く突入する。
そうでないと、私は仕事なんていうツマラナイものを続けることができない。
どうしてもダメな時は辞めてしまう。実際にそうして蹴った仕事もひとつやふたつではない。

こういうのは真っ当な社会人にあるまじき姿なのだろうか。
そうかもしれない。

しかし、息苦しく苛立たしい「いい人」株式会社を脱走したい人には、この本はうってつけだと思う。

自分の「いい人じゃない」生き方を振り返ってみると、赤面する場面も多々あるが、性格はもともといい人に向いてなかったらしい、ということもなんとなく感じた。
それは狭苦しい世間という型に嵌らない自由人であるという誇らしい気分であると同時に、家族や社会に対して坦々と責任を全うするということができない子供じみた社会的劣等者であることを再確認させられてがっかりした気分でもある、というのが正直な気持ちである。

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